※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

まるのいないバースデー

今日、私は50歳の誕生日を迎えた。人生100年時代の折り返し地点となる記念すべき日である。しかし、特別なことをするわけではなく、これからの人生後半に向けて何かを見つめ直す良い機会になると感じている。

誕生日にあたって、親しい同僚から花束やケーキなど、思いがけないプレゼントをいただいた。50歳を迎え、まるを失って心が沈んでいる私に対する心遣いであろうが、なぜこれほどまでにしてくれるのかと少し戸惑った。しかし、数ヶ月前に夫からお下がりで譲られたMacBookを同僚にあげたことに対する感謝だと後からわかった。

その同僚は写真が趣味で、写真教室に通っていた。教室で出力のカリキュラムが始まったとき、パソコンがなくて困っているという話を聞いたので、ちょうど夫から譲られたMacBookを彼女に使ってもらえたらいいのではないかと思い、夫に相談して譲ったのだ。「もし使えなかったらごめんなさい」と軽い気持ちで渡したのだが、彼女からこれほど感謝されるとは思わず、恐縮した。

我が家に訪れた明るさ

この出来事は、我が家に明るさをもたらした。心のこもった贈り物や美しい花束が、家の雰囲気を華やかにしてくれた。いつもまるの祭壇には庭のバラを供えていたが、今回いただいた花束はその美しさで際立ち、まるの思い出をさらに輝かせた。

まるの短い闘病生活の中で、私はあえて余命を聞かなかった。夫は余命を知っていたが、「もし抗がん剤が効いて、介護が2年や3年に延びたら、それはそれでどうしよう」と言っていた。私は「誕生日までは一緒に過ごせるかな、年内もってくれたら」と願っていた。

しかし、実際には抗がん剤治療を始めようとしたその日に、まるは星になった。「そんなの嫌だ、やりたくない」というまるの強い意志が感じられた。

まるが星になったとき、私は50歳の誕生日プレゼントとして、まるが神様になってくれたことを受け入れようと思った。

まるとの最期の日々

今日、誕生日を迎え、まるのいない生活にも徐々に慣れ、日常が戻っている。亡くなった直後は、闘病中のことや最期の瞬間、火葬の記憶が悲しくて辛いものであったが、今では、くるくると輝くまるの目が私の心に強く残っている。「穏やかな日々をありがとう」とまるに感謝している。

数日前、夫がふと「猫の安楽死って、いつ判断すればよかったんだろう」と言った。それは、まるに対して安楽死を選べなかったことへの疑問であった。病院の先生からも安楽死という選択肢があると聞いていたし、周囲の人からも「そんなに苦しむなら…」という声があった。

しかし、まるは最後までその命をまっとうしてくれた。安楽死を判断するタイミングは最期の15分ほどしかなく、その時は夜遅く、病院に行く選択肢はなかった。まるは自らその選択肢を与えずに、私たちの手で最期を迎えさせてくれたのだ。

その夜、私が遅く帰宅したとき、まるはお腹を上に向けて横たわりながら、くりくりとかわいい目を輝かせて「おかえり」と迎えてくれた。あの愛くるしい表情が忘れられない。あの夜、夫とまるの時間を邪魔しないよう、夫の部屋には入らなかったが、トイレへの動線のために少し開けたドアの隙間から、まるが顔をのぞかせてくれた。「まる、起きてたの?」と声をかけると、まるは「ここにいるよ」と、くりくりとした目を輝かせて応えてくれた。

その後、私がシャワーを浴びている間に、まるの呼吸が荒くなり、彼は帰らぬ猫となった。

最期までくるくるとした目がかわいらしい、いたずらっ子のようなまるであった。私たちが安楽死を選ぶ余地を残さなかったまるは、本当に親孝行な猫だったと思う。

たらればだが、もしまるに安楽死を考えるなら、それは事故や病気で脳死状態に近づいた場合であろう。病気でなくとも、寿命が来れば食べなくなり、その状況を見守ることが私たちにとって最期の準備となるだろう。

今回、まるには強制給餌を試み、辛い思いをさせたと思う。しかし、家族として病気と向き合おうとする気持ちからであった。強制給餌をしてから、まるは少し元気を取り戻し、最期の日の朝まで、大好きな庭に出てのんびり過ごし、しっかりとした足取りで部屋に戻ってきた。その後ろ姿を見せてくれたことに感謝している。

夫は余命を聞いてから、強制給餌に対する熱意がぐっと減り、疲れていたが、幸いなことに、まるはたったの1週間でその負担から解放された。強制給餌については、また別の機会に書きたいと思う。

まる、今日私は誕生日を迎えたよ。

まるがいない50歳の誕生日は想像していなかったけれど、お互い生き物だから仕方ないね。私の人生のうちの11年間、40代を一緒に過ごせたこと、とっても嬉しいよ。

貴重な時間をありがとう。幸せだったよ。まるも幸せだったよね。

今も、まるのおかげで幸せを感じている。ありがとう。